冬薔薇(ふゆそうび)/谷村新司「群青」

「冬薔薇(ふゆそうび)色のあけぼの焼跡に」(石田波郷)。今朝の読売「四季」の一句である。空襲で焼け野原になった東京の冬の夜明け。薔薇色の朝焼けが何と鮮烈なことか。冬の薔薇は寒さに耐えて少しずつ莟(つぼみ)を成長させる。初夏に比べれば小さめだが、けなげな花。選者・長谷川櫂はそう解説している。
 
「冬薔薇(ふゆそうび)」とくれば、頭の回路が谷村新司の「群青(ぐんじょう)」に飛ぶ。『空を染めて行く この雪が静かに 海に積もりて 波を凍らせる 空を染めて行く この雪が静かに 海を眠らせ あなたを眠らせる 手折れば散る薄紫の 野辺に咲きたる一輪の 花に似てはかなきは人の命か せめて海に散れ 思いが届かば せめて海に咲け 心の冬薔薇』(谷村 新司さん 「群 青 」 - YouTube)。
 
  谷村の曲でもっとも支持を受けている、と聞いたことがある。「昴(すばる)」だと思っていたが、そうではなくて「群青」だという。この曲は、聴く人それぞれが自らの大事な思いを重ねて聴いているからだ。自分はこの曲を聴くと、亡き父を想い、泣いてしまう。海難事故で帰ってこなかった。52歳だった。明日は母の命日だ。父と母に一輪の冬薔薇を捧げたい。