山中伸弥教授のユーモア

 昔、父から「いい振り、こくな」と厳しく言われていた。「真面目なことを、くそ真面目な顔をして言うな」とも怒られた。今考えると、「傲慢になるな。上から目線で相手に話すな」ということだろう。それを繰り返し注意されるほど、子どものころの自分は格好をつけようとするところがあった。(それはあるコンプレックスの裏返しでもあったのだが…)
 
今朝の読売・解説面「解」が、iPS細胞の山中伸弥教授のユーモアのある講演に注目している。コラム執筆者は科学部次長の佐藤良明氏だ。山中教授の講演を何度か聴いたが、ジョークを巧みに織り交ぜ、時々出る関西弁が、場をなごませるという。ここまでは多くの人がそう言ってきた。佐藤氏は短いコラムの中で3点を強調している。
 
①自著によれば、本人は人前での発表に苦手意識があった。そこで留学時代、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校で発表力を磨くゼミに入った。口頭発表し、撮影した映像を見ながら、他の受講生が辛口に批評する。聴衆をひきつける話術は米国で鍛えられた。
②昨年12月のノーベル賞記念講演では、ES細胞の性質を説明する言葉で「immortality(不死)」を使うはずが、つづりを間違えた。スクリーンに映ったのは「immorality(不道徳)」。「わざとやったのではありません」と笑いを誘った。
③そんな中、講演の最終盤で山中教授が一瞬涙声になる場面があった。亡き実父、義父を思い「医学に導き、医師の道を教えてくれた2人がこの瞬間を楽しんでくれればと思う」。人柄のよく表れた話しぶりだ。ユーモアと感謝の言葉。こういう話のできる受賞者が日本から出たことを、ちょっと誇らしく思う。
 
―なるほどと思う。温かみの残る良質のコラムだ。冒頭の父の忠告が、あらためて身に沁みる。先日、人前で30分話をしなければならなかったが、20分で終わった。10年ぶりだったので、「間」が取れなかった。どんどん早口になっていくのが分かったが、途中で修正が効かなかった。後日、聴いていた人が録音したものをCDにして渡してくれた。ビックリして、また口がモグモグ。恐ろしくて再生などできるわけがない。(オレは一生、進歩しないな!!)