「それぞれの人生」

   昨夜は昔お世話になったN社長の通夜に参列した。芝・増上寺で社葬として執り行われた。多くの参列者が来場して列をなして焼香した。一流企業や大手マスコミの各社社長からの供花札が並んでいた。そのあとの軽い食事のときに、元同僚やクライアント、プレス関係者と遭い、久しぶりに言葉を交わした。自分は三人の社長に仕えて、その後独立した。二番目の会社で八年半、N社長の下で働いた。
 
 関係者から聞いたところでは、療養中とはいえお正月には元気だったという。それなのに73歳で亡くなった。約一年前に現役で仕事中に倒れたそうである。N社長らしい、仕事に生きた人生だった。「今はだれにも会いたくない」とリハビリ中に語っていたと聞いた。「あの人らしい」と小生は思う。負けず嫌いは天下一品だった。その粘り強さが皆が驚くほどの人脈を形成した。
 
 「それぞれの秋」というアリスの曲がある。一人の男が死んでいく。「人は自分の死に場所を捜すために生きる」との歌詞が入っている。この谷村新司の詩にこれまで真っ向から否定できなかったが、昨日はじめて分かったことがある。「人は生き続けようとして激しく戦いながら死んでいく」のだ。そう思うことにする。久しぶりに会った人たちは、それぞれがその人らしく転身し、進化していた。「それぞれの人生」を生きている。