「貪欲に社会に入っていけば、得るものは多い」

 読売・解説面で生活経済学者の暉峻淑子(てるおか・いつこ)氏がインタビューに答えている。「社会参加が生む豊かさ」を強調していて、そのためには「貪欲に人と関わる」ことが必要だと述べている。聞き手は、尾崎真理子編集委員
 
 ―先の総選挙の投票率は戦後最低の約59%。重要な選挙なのに、意義がよく理解されていない気がします。
 「社会参加と自分の人生との深い関連が、若い人に十分教育されていないのではないか。参加しなくても民主的な社会は続くと他人任せだ。格差、差別が拡大しても、自分に降りかからない限り無関心でいる。たしかに社会への入り口を見つけにくくなったが、生きた情報と信頼できる人間関係をどれだけ実社会から引き出せるか―実はそれが個々の人生の成否を決め、社会全体の効率を上げる。貪欲に社会の中に入っていけば、得るものは多い」
 
 ―団塊世代の定年退職者も、会社から社会へ入るのはなかなか難しいと聞きます。
 「ここでも社会と個人、双方に大きな損失が生じている。趣味でもボランティアでもNPOの活動でもいい。生きている限り、社会とのつながりを何本も 探し求めてほしい。志を持って活動を始めている仲間はすでにいるはずだ。公共施設やサービスもフル活用して、『社会』がしぼんでいくのをくい止めてほしい。一人でも多くの人が社会を支え、時には社会からささえられなければ、希望の再生どころか現状維持も難しいのだから」
 
* 「何本も」の下線は久末入れ。
* 暉峻氏は1928年生まれ。埼玉大学名誉教授。岩波新書のロングセラー「豊かさとは何か」「豊かさの条件」に続く3部作の完結編「社会人の生き方」を昨秋、刊行した。