小樽漁港でニシン「群来(くき)る」

 昨夜北海道新聞web版を眺めていたら、春の兆しを告げるニュースが目に入ってきた。
 
群来 命の白い帯 小樽祝津漁港に 今年初
   ~漁港内の海面を乳白色に染めた群来=24日午後2時ごろ 
 
 
    【小樽】小樽市祝津漁港で24日、ニシンの群れが産卵のため来遊する「群来(くき)」が、今年初めて確認された。群来は、雄ニシンの大群が精子を出して海が白くなる現象。道立総合研究機構中央水試(後志管内余市町)によると、小樽沿岸での群来確認は2008年から6年連続となる。小樽市漁協によると、24日正午ごろ、地元住民が祝津漁港内の海面が白く濁っているのを見つけた。港内に網を仕掛け、体長約30センチのニシンを50匹ほど引き揚げた漁業の男性(41)は「型はいいが、量はまだまだ。これからに期待したい」と話していた。<北海道新聞1月25日朝刊掲載>
 
 春告魚であるニシンの群来は、一つの希望だ。自分の故郷・古平(ふるびら)町の積丹寄りに「群来村(くきむら)」という名前の部落があった。古平もかつてはニシンで栄えた町である。叔父から聞いたことがある。郡来村は山道からほとんど崖に近い曲がりくねった坂道を降りていくと磯浜になる。この浜にもニシンの大群が押し寄せた。
 
  叔父が子供の頃、山道の上から眼下に「群来(くき)る」(ニシンがどんどん押し寄せ、海面が真っ白く変わっていく現象)のを見たという。見える範囲すべての海面がつぎつぎに真っ白く変わっていったそうだ。しかし、自分が生まれた戦後まもなく古平からニシンは姿を消した。叔父たちはニシン場の盛りを知る最後の世代になったのだった。
 
  ニシン群来は春の一大事業であり豊漁が豪勢な生活を約束した。「ニシン群来る」のニュースは、叔父たちにやはり『夢よ、もう一度』の気持ちを起こさせるのである。叔父83歳。「まだ丈夫だ」が口癖。