「カイゴの花」

   「久末さん、カイゴの花って知ってる?」と友人のS氏が問いかけた。そのとき、二人で「日本の大天才・空海」の話をしていて、彼が「空海の足跡を尋ねてぜひ長安(現・西安)に行ってみたい」と話した後だった。「解語の花」と書くという。まったく分からない。老人介護をする若い女性のことかなとも一瞬思ったが、ジョークで切り返す場面ではなかった。
 
 即座に降参した。彼は「『ことばの分かる花』の意味で、楊貴妃(ようきひ)を指す。頭の良い美人をそう言うそうだ。中国唐の玄宗皇帝が寵愛(ちょうあい)する楊貴妃とともに、池に咲く蓮(はす)の花を見ながら、居並ぶ臣下たちに向かって彼女を指さし、『この池に咲くみごとな蓮の花々も、この解語の花には遠く及ばず』と述べたという」と解説してくれた。
 
 「女性に対する最高の褒め言葉だ」とも言う。なるほど、楊貴妃ときたか!! 玄宗は息子の嫁であった楊貴妃を自分のものにしたんじゃなかったっけ?! S氏は先日、高松出張の際に善通寺など空海ゆかりの寺院を巡ってきたという。自分も司馬遼太郎著「空海の風景」は大好きな一冊なので、彼の「空海」論をじっくり聞いた。ほど良い春の夜だった。