桜は人を狂喜させる

春風駘蕩、桜でもめでてください」、友人Sさんからのメールにそうあった。ニュースでは朝早くから近くの関越自動車道が渋滞している。今夜から天候が下り坂になるので、穏やかな春日和の今日のうちに花見行楽に出かける人が多いのだろう。
 
 明朝、友人Kさんの車に同乗して板橋区の高島平に行き、午後は電車で坂戸に戻る。行きに桜並木のそばを通る。高島平団地や赤塚公園の桜も満開だろう。帰りは電車の窓から、柳瀬川や入間川の堤防沿いに溢れるような桜を楽しんでこよう。
 
  桜には人を狂喜させる何かがある。今朝の毎日新聞「余録」はこう書いている。
 
―こんな芭蕉(ばしょう)の句はどうか。「花に酔へり羽織(はおり)着て刀さす女」▲江戸時代に女性が羽織を着て刀をさすなどまずありえなかったことだろう。だが満開の桜花に酔えば、そんなあべこべの世界が現出する。着飾った町人や田舎の老人、武家、御殿女中、僧や儒者も分け隔てなく集まり、仮面や仮装も珍しくなかった江戸の花見である▲時代は下って明治時代、花見を見たある米国女性がはっきり書いている。「向島のカーニバルは、古代ローマ人そっくりなことを示しているのが、この春の酒宴である。男らが踊っている。全員が俳優、弁士、パントマイム役者なのだ」。桜の下は祝祭の空間だった。