新撰組・斉藤一

一昨日午後、外出しなければならないのに、高校野球決勝で「浦学」が戦っているのに、どうしてもチャンネルをテレビ東京に合わせてしまった。映画「壬生義士伝」をやっている。この映画はすでに5,6回は観ている。10分だけ観ようと、20分観てしまった。やはり原作、浅田次郎の力だろう。観るたびに心動かされる場面がある。
 
今回見たのは、主人公の吉村貫一郎(中井貴一)と斉藤一佐藤浩市)が初めに会うところだ。宴会の席で斉藤は新たに入隊してきた吉村を「この男を斬ろう」と思う。理由は吉村が「郷里自慢と家族自慢を喜々として話し続ける田舎者」だからだ。
 
斉藤一は江戸生まれで、沖田総司永倉新八と並び新選組最強の剣士の一人であった。永倉は弟子に、「沖田は猛者の剣、斎藤は無敵の剣」と語ったという。「所詮人は糞袋に過ぎない」と割り切って人を斬りまくった斉藤一。そうでもしなければ自分が生きていけなかった。大河ドラマ「八重の桜」でも、斉藤は新撰組で近藤、土方と肩を並べる特別の存在感を示している。
 
吉村を「斬ろう」と思った訳は分る気がする。殺伐とした時代の中で自らの荒んだ心をすでに斉藤は感じ取っている。そこに吉村のような人間が現れたら、自分の空しさを認めなければならなくなる。吉村のような者は無性に腹立たしくなるのだ。人間は皆、吉村の要素と斉藤の要素を併せ持っている。どちらが出る場面に遭遇するか、だけだ。