出光佐三・出光興産店主

 昨日から本屋大賞に「海賊と呼ばれた男」(百田尚樹著、講談社)が選ばれたとの報道が相次いだ。今朝の朝日は社会面全部を使い、読売は2面「顔」で取り上げている。「敗戦でほぼ全財産を失っても一人の解雇者も出さず、世界の石油メジャーに真っ向勝負を挑み続けた出光興産創業者・出光佐三の生涯を熱くつづった」内容。
 
 出光佐三氏の一生は、壮絶な人生であった。これまでも多くの作家が取り上げ、その懐の大きさと壮大なビジョンを書き表してきた。また、本人も自らの歩みを数冊の本に残している。かつて出光興産を6年間ほど担当した。当時は総務部広報担当の人たちとさまざまな打ち合わせを行った。広報人生の貴重な一コマだ。
 
 よく「出光の家族主義」と言われた。その言葉の通り、社員はみんな暖かな人たちだった。当時は出光佐三氏の晩年の時期だった。肩書きは「店主」であった。店主室長のAさん、広報担当のTさん、Hさんなどに大変お世話になり、20代後半の自分は多くのことを学んだ。優秀な社員がたくさんいたからだ。
 
 「永遠の日本」を出版したとき、Aさんから社内報「月刊出光」で対談をやりたいが、相手はだれが良いかと聞かれた。迷わず「いま注目されつつある城山三郎さんだと思います」と答えた。「それではお願いします」となった。4時間近い対談は2回に分けて掲載された。「店主」の横に若くて細い自分が写っている。