NHKスペシャル「家で親を看取る」

 昨夜のNHKスペシャル「家で親を看取る その時あなたは」に、やっぱり考えさせられた。高齢者人口の増加率が全国一の横浜市。この街を舞台に病院や在宅医療の現場を伝えるドキュメンタリーだった。今後、「在宅の看取り」に本当に必要なものは何かが問われていた。いまは自分たちの親をどうするかだが、10年余りのうちに自らの問題になる。
 
 現在、日本人の8割が病院で亡くなり、“在宅死”はわずか2割ほど。団塊の世代を中心に超高齢化が進む中、「看取りの場所」を「病院」から「在宅」へと転換する国策が打ち出された。2012年を「地域包括ケア元年」と位置づけ、年老いても住み慣れた地域で暮らし、最期を迎えられるよう、在宅医療や看護、介護サービスの整備を進めようとしている。
 
「治療は終わったので病院以外で療養を」と早期退院を求められる高齢者と家族。しかし24時間対応できるヘルパーや在宅医など、在宅医療を支える社会インフラは不足したままだ。家族は自分の親の“老い”や“死”を正面から受け止められず、苦悩を深めているのが現実だ。どの時代の親も言ってきた。「子どもに面倒をかけたくない」。
 
団塊の世代もそう言う人がほとんどだ。現在、親の介護で自分の生活を犠牲にしながら戦っている人も多い。番組では「口から食べられなくなる」ことが、真の終末の入口であると強調した。胃ろうや栄養点滴で生命維持している人に家族の言葉は届いているのか。「それは分らない。聞こえていても反応できない場合もある」と看護師の家人は言う。
 
横浜市の在宅医は「これまで医療は命を延ばすためのものだった。これから必要なのは“死に寄り添う医療”だ」と語った。胃ろうや栄養点滴を外すかどうか、家族の葛藤は深い。「安楽死」とは? 両親を看取った60代の娘が「これで良かったのか、まだ分らない。自分ができることをやりきった充実感はある。しかし、心残りはある」。重い言葉だ。