「非情の常時リストラ」(溝上憲文著、文春新書)

   「非情の常時リストラ」(文春新書、本体770円)。ジャーナリスト・溝上憲文氏の新刊が今日から発売される。先週半ばに送ってもらったので、土、日2日間でじっくり読んだ。すでに始まっている「大選別時代」の実態を企業側と社員側からそれぞれ掘り下げ、現在、わが国のリストラ新基準がどこに向かっているかを明示している。
 
 溝上氏は30年前から人事制度を中心に雇用問題の取材を重ねてきた。すでに「人事問題のプロ」として同分野では知られており、学歴社会や成果主義など具体的取材にもとづくリポートを著書や経営誌などで発表してきた。今回の新刊はそれらの知見を総動員したうえに、新たな取材結果・見解を追加して書き上げた。
 
 この本の帯には、「大選別社会に備えよ。同期入社でも500万円の年収差。非管理職40代社員が狙われる」とある。溝上氏は「日本企業の行き着く先を一言でいえば、『選別主義』の強化である。『コア人材主義』と言い換えてもよいかもしれない。日本の企業文化の大転換である」と喝破している。
 
 個別企業の人事制度も豊富に盛り込まれていて、厳しい時代の実態が理解できる。「もはや社員はコストでしかない」との考え方がさらに進む。80年代の繁栄に浴した世代としては、ため息をつくしかない。しかし、救いは著者が働く側の立場を理解し、生き残り策を助言している点だ。リストラ社会のリアル、必読の好著!!