札幌・藻岩山の山開き

   6月1日といえば、自分にとっては札幌・藻岩山の山開きだ。学生時代は前夜からファイヤーストームを行い、飲めるだけの酒を飲んで寮歌を怒鳴った。藻岩山下の校舎横の「紫藻寮」に一年半いたので、寮の友人たちと4年間毎回登った。若い頃の「暴走」は凄まじいし、その狂気がこの時期だからこそ体を占領したのだろう。
 
 だいぶ記憶が薄れてきたが、夜11時過ぎた頃から山登りが始まった。それぞれ仲良し数人でブツブツ話しながら、時間をかけて山頂を目指したものだ。この時期の札幌はほとんどが晴れていて、雨の登山はたった一回だった。晴れでもいいし、雨でもいい。新たな季節の中で、何でも騒いでいれば良かったのかも知れない。
 
 2時間ほど汗だくで登っていくが、途中で酔いが醒めて一、二回、体が登りを拒否する。友達が声をかけ、後から悠々と登ってきた酒臭いドテラ姿の「寮の主」が一升瓶を差し出し、「飲め―」。渇ききった喉に安焼酎の焼ける液体が流れ込む。あまり飲むと怒られた。山頂での宴に必要な酒なのだ。とかなんとか、やっと辿り着く。
 
 すでに凄い数の黒い影がゴロゴロいた。暗くてよく見えないが、方々から奇声が上がる。後は朝まで待って、ご来光を見られるかどうかだけだ。2勝2敗だった。晴れの夜明けは、眼下に広がる札幌市街を光り輝かせた。しばらく山頂で仲間と駄弁り、飽きたころに流れ解散。「祭りの後の虚脱感」を引きずりながら、下山した。