「カズオ、明日に向かって顎を引け」

   「なんでもかんでも懐かしがるようになったら人生、オシマイだと言うが、それにしても懐かしい」。土曜日の朝日be版「サザエさんをさがして」の書き出しである。いしだあゆみの「ブルー・ライト・ヨコハマ」のことを書いている。本当に懐かしいが、いま聴いても新しい。最近の由紀さおりのカバーも良いのだ!!
 
 北海道でいくつかのことを確認してきて、「何でもかんでも懐かしがるなら、人生オシマイ!!」と言われて一瞬Wue~と思った。でも、それならそれで「いいや」と開き直った。会っておきたい人たちに会って、想像ばかりしていた日本海の色や積丹岳の残雪をしっかりと目に焼き付けて来たのだから…。It’sオーライだ。
 
 言われてみれば、そろそろ「人生、オシマイだ」に近づいてきた。振り返れば雑な人生だったが、それもまた詮無いこと。行き当たりばったりで、ここまで来てしまったのだから、何おかいわんや。読みかけの本や資料、飲みかけの薬の袋などがサイドテーブルの上に山盛りになっている。己の不揃いの年輪の一部。
 
 その夕方、近くの本屋で、「顎を引け―」のタイトルが目に飛び込んできた。これだ、自分がもっとも探していたキーワードだ。一ヶ月ほど前に若い友人から「息遣いがやや荒い、苦しくないですか?」と聞かれた。その通りだった。「上がっている顎を引く」。明日に向かって顎を引け、カズオ。2日経ったが、まだ慣れない。