自分の「昭和」がまた一つ終わる―

  数日間、珍しく考え込んでいた。火曜日夜に帰宅したら、一枚のハガキが届いていた。「あきこの店・閉店のお知らせ」。店主・洋ちゃんが例の個性的な文字で宛名を書いていた。文面には「この度7月20日を以ってスナック『あきこの店』を閉店とさせて頂きますので。残り少ない日を皆様と楽しく語らいながら飲みたいと思います」。
 
 愕然とした。ハガキを食卓の横において眺めながら、何日か経ってしまった。実は、その日昼前に二人の新聞記者Mさん、Aさんと電話で話して、「今月末にでも、懸案の暑気払いをあきこの店でやろう」と決めたばかりなのだった。数ヶ月前に三人で初めて「カラオケ」で大騒ぎして、そのうち「続編」を計画しようと話し合っていた。
 
 小生が30年前から通い、歌の上手いMさんを誘って行った隠れ家的な店だった。今年春にMさんと久しぶりに行き、洋ちゃんと飲んで歌って盛り上がった。その話をしたらAさんが「Qちゃん(小生の愛称)、自分が『歌う新聞記者』と言われていることを知らないの!!」と言い、その後すぐに実行した経緯があったのだ。その時だ―。
 
 Aさんは提案してきた。「ただカラオケをやるのはつまらない。それぞれの人生に深く刻み込まれている5曲ずつ歌おう。その思い出を二人に紹介する形で」。Aさんはやはり只者ではなかった。すごい企画力だ。他の客の迷惑にならないように、夕方5時から開店してもらった。食事を作ってもらいながらのカラオケ合戦だった。
 
 Aさんは合唱部かグリークラブ出身の歌唱法で、「昴」などを朗々と歌った。Mさんは何でもOKの歌名人で、場数を踏んできた上級レベル。小生は息切れ、ときどき音外れの感情入れ込みすぎ型。最後に元歌手志望だった洋ちゃんの歌で締めた。しかし、こんな楽しい場面も無理になる。自分の「昭和」がまた一つ終わる。