いま再び、「向田邦子ブーム」

 いま再び、向田邦子ブームだという。昨日のNHKクローズアップ現代」で「33年目の向田邦子なぜ惹(ひ)かれるのか」と取り上げていた。夜中の再放送で観た。「七人の孫」、「時間ですよ」、「寺内貫太郎一家」、「阿修羅の如く」など、ホームドラマを不動のものにした。
 
 妹・和子さんは「姉はいつも、人の縁で育てられてきたと話していた。今また、読者によって育てられている」と33回忌を迎えるにあたって、そう語った。作家として最好調のとき、不慮の航空事故で死去。享年51歳。書かれた脚本・作品は3,500本にも及ぶという。
 
 友人だった黒柳徹子さんは、「ほとんど毎日、向田さんの家に行っていた。その生活には彼女の人生観がはっきり示されていた。『人生、糾(あざな)える縄の如し、幸せと不幸せは交互に来る、それが人生だ』との考え方は一貫していた」とコメントしていた。
 
 映画監督・是枝裕和氏は、「向田作品は単純ではない真の家族のつながりを問うている。それぞれの価値観が違っていてもつながっていく。それが家族の本質だ」と述べている。小生も向田作品を読んできたが、その底には人間に対する深いまなざしがある。
 
 向田さんはつねに、「人間を十羽一絡げで見てはいけない」と述べていた。このことを、澤地久枝さんは「向田作品の最大の特徴は、実は人生の陰りや悲しみなのだ。それが多くの人々の心を打つのだ」と指摘していた。
 
 赤坂のあの小料理屋「ままや」の時代が懐かしい。