草森紳一「江戸のデザイン」

   今朝、久しぶりに「草森紳一」の名前を見た。読売「時代の証言者」に現在、写真家・立木義浩氏が連載している。「1965年(昭和40年)、27歳で写真誌『カメラ毎日』4月号に写真集『舌出し天使』を発表した。構成は和田誠さんで、寺山修司さんの詩を写真に添えた。評論家の草森紳一さんが解説を書いてくれた」
 
草森紳一さんには、一回だけお会いした。自分がまだ入社3、4年目の時に日本専売公社(現・JT)の広報を担当していて、タバコについて話しを聞きに行ったのだ。誰かが草森さんを「類(たぐい)なき変人」と書いていた。帯広出身、慶大で中国文学を専攻。蔵書の多さは編集者の間で伝説になっているほどの博識家だった。
 
指定された赤羽橋の喫茶店で待っていると、ぴったり時間通り現われて小生の顔をじっと見た。あまり明るい店でなかったので、外から入ってきて、一瞬、見えにくかったのかもしれない。向かい合って座り、日本のタバコの名称やデザインについて感想を聞いた。草森さんは両切りピースを矢継ぎ早に吸い続けていた。
 
彼の著書「江戸のデザイン」(1972)が出版された時、「週刊朝日」で書評を読んだ。一階の本屋さんに電話で注文。3、4日後に連絡があり、受け取りに行った。「3万いくら」の値段だった(えッ!)。自分は書評で「3千いくら」だと思い込んでいた。一桁、勘違いだった。3千円を手付け(?)で払い、本を受け取った。給料約5万円だった。