「悪名の棺-笹川良一伝」

先週一週間をかけて土曜夜、「悪名の棺-笹川良一伝」(工藤美代子、幻冬舎文庫)を読了。先日、本屋さんで目に飛び込んできて、一度通り過ごしたが結局買った本だ。「笹川良一」といえば、かつてのCM「人類みな兄弟」、「一日一善」での大きな顔であり、モーターボートで儲ける裏社会の典型的な人物。そんなイメージをずっと持ってきた。
 
功名の人物が皮を剥かれて実体を暴かれる類の本は、数え切れないほど読んできた。私は伝記を含めて人物に関する本こそが「面白い本」だと思っている。工藤氏の「笹川良一伝」はその逆である。タイトルの「悪名」で象徴されるわが国屈指の人物だ。その人の善の部分が次々と明らかにされてくる。なんとなく微笑みながら、読み終わっていた。
 
笹川氏に関する著作は驚くほど多い。読み始めて、川端康成と幼な友だちであったことを知る。その後、山本五十六東条英機、そして、天皇陛下との交流を織り込みながら、彼の豪胆な人生が描かれていく。当然、何人かの「妻たち」や川島芳子など時代の女性たちとの付き合いも描かれる。工藤氏は「京都・山科の大津法子」の存在を初めて浮上させた。
 
読み終えて、一つの時代が終わっていったことを覚えた。日本社会に二度とこのような人物は出現しないだろう。そう思って、ベッドに入った。その夜7時過ぎに、久喜市のHくんから「破綻 バイオ企業・林原の真実」読了、とのメールが届いていた。一昨年1月初めの新年会で自分が「林原」を友人たちとの話題にした。同年2月会社更生法が申請され世間を驚かせた。
 
昨日朝、「本をクロネコ便で送った。今晩着く」とのメール。夜、拝受した。寝る前から読み始めたが、気がついたら半分以上読んでいた。今晩たぶん読み終えるだろう。林原は20年ぐらい前に取材に訪れ、相当なカルチャーショックを受けて帰ってきた会社だ。改めて書く。