「タラは情けない食べ物」

    「(英国で)『情けない食べ物』の代表は白身魚のタラだった。サーモンは高級だが、白いタラはふにゃふにゃで力が入らない腰抜けの代名詞にもなった。と、同時に、最も入手しやすい魚でもあった」(河合祥一郎「味な話」・読売日曜版9/20付)。
 
 タラに「情けない」という形容詞がついていて、もう一度文章を見直した。「ふにゃふにゃで力が入らない」ともある。半ば当たっているだけに、腹が立った。but、食べ物が不味い英国人にはタラの本当の旨さは理解できていないのだと断定した。
 
 タラの身は水分が多いので柔らかいが、本来なんとも言われぬ味をもっている。一夜干しや塩焼きなどにすればよく分かる。湯豆腐にタラを入れるのは旨みを増すためだし、タラ鍋の残りで雑炊にすればいくらでも食べられる。
 
 タラは卵や白子を取り除いたあと、蒲鉾の原料として活用されている。多くの美味しい蒲鉾にはほとんどといいほど、タラのすり身が入っている。高級蒲鉾にもちゃんと入っている。卵は加工されてタラコやメンタイコになり、全国で愛食されている。
 
 わたしはタラで育った漁師の息子で面子がある。タラは「情けなくなどない」。大事な食材でダイエットにも良い。タラちゃんもワカメにそう言っている(?)。しかし、舌が濃い味にしか反応しない最近の人にあの白身の上品な旨さは分からないだろうな!