身欠きニシン

 今朝の毎日新聞「余録」に身欠きニシンの話がある。誤魔化しやはぐらかしの仕掛けの意味だといっている。この記事を読んで、子どものころ身欠きニシン工場で見たことを思い出した。出荷数日前にテカリを出すためシラシメ油を塗っていた。いちだんと高級にみえる磨きニシンが束にくくられ、箱につめられ売られていった。
 
ミステリーでは真犯人を隠すためにいかにも犯人らしい人物を登場させて読者の目をくらますのが常道である。このような注意をそらす仕掛けを英語で『レッド・ヘリング』という。直訳では赤いニシンだが、薫製(くんせい)のニシンを指すそうだ▲なぜニシンかといえば、昔は猟犬の訓練のためにキツネの通り道に薫製ニシンをなすりつけて臭いを消し、犬の嗅覚(きゅうかく)を鍛えたからという。▲あれ、どこかからニシンの臭いがしたような……と思ったら、もしやこのせいか。安倍改造内閣に1億総活躍社会の担当相ができていた。」(10/8「余録」)
 
 「一億総活躍社会」とまじめ顔でシャーシャーと語られると、聞いてる方が恥ずかしくなる。大丈夫なのか、この人!? 大袈裟で実のない言葉をいつまで語り続けるの。庶民は慣れきって、右耳から左耳へつつ流す。頭のどこにも掠(かす)らない。
 
政治家は言葉を正しく使う能力が問われる。誤魔化しやはぐらかしなどリアルさのない言葉は、幼稚な印象を強める。中学生の弁論ならまだしも、宰相の語る言葉は重いものだ。そんな空虚なキャッチコピーをマスコミも上書き増幅している。