「感情労働」

 感情労働―初めての言葉だった。家人が勤めている特養老人ホームのニュースレター・巻頭言にある。「介護の仕事は、『感情労働』とも言われるように、否が応でも相手の感情と自分自身の感情に向き合わなければならなくなる」(施設長)。
 感情労働とは、アメリ社会学者A.R.ホックシールドが提唱した概念。感情抑制や緊張、忍耐などが仕事の条件になる。「肉体労働」や「頭脳労働」に比べて、感情労働に従事する人はつねに自分自身の感情をコントロールし、相手に合わせた言葉や態度で応対することが求められる。究極クラスのコミュニケーション術。
 介護士や看護師などがその例。介護施設や病院で働くことは下手するとストレスを抱え込む場合もある。優しいスタッフの微笑みにはそんな意味合いも含まれうる。「病気や障害で苦しんでいる人を見ると気の毒に思う、手を差し伸べたいと思う」、彼らが心から沸き起こる感情を使うことが感情労働なのだという。明日からより敬意。