「百年泥」読後感

 「百年泥」は読者が“食わせられる”。作者はタイトルから作品の流れまですべて計算づくでいながら、自然の流れにみせかけている。なにか言おうとすれば、それは彼女の術中に嵌(は)められることになる。百年ぶりに大洪水になった川は歴史の流れと人生の総体で、溢れ返る泥は無数の人生の明暗、陰影、悲喜が混濁したもの。
 
 一言でも感想を書けば、作者の手のひらで遊ばれる。彼女は頭のヨイ人だ。変幻自在に展開していくのは、やはりインドという土地柄と人々の生き方が舞台だから。インド効果をフルに計算している。文章が話すスピードで流れているので、つい乗せられる。この小説に感動しなかった。軽口(?)も多い。作者はその指摘もお見通しだ。