水仙をささげる

 軒下に突き出すように咲いている5本の水仙を亡き父に贈る。21日春分の日は父の誕生日だ。春の彼岸に生を受け、秋の彼岸に52歳で利尻・礼文沖で事故死した。父の好物だったおはぎを昨夜2個食べ、これからお昼にも残り2個を食す。
 
 昔、母の従妹のご主人Mさんが撮った白黒写真がある。父と母が二人でおはぎか、汁粉をつくっている。二人とも穏やかに笑いながら手を動かしている。この写真は自分の脳裏にいつも留めておいてある。甘党の父はこんな時、好い表情をした。
 
 父の享年より20年も長く生きてきた。あの時の衝撃と闇は年毎に風化されてきた。そもそも昨日の過去と今日の過去はちがう。人は想いたいように想う。「ボクにはなにもないけど7つの水仙をささげます」(七つの水仙)。陽が差してきた。南風だ。