「ホッケの開き」

昨夕、友人の薦めで食した「ホッケの開き」は、故郷・積丹半島の味がした。日本橋近くで打ち合わせがあり、その後、彼が案内してくれた「浜町亭・茅場町店」で頼んだものだ。二人で食べるのがちょうど良いほど大きく、日本海風の味が溢れ、値段も安かった(大きなホッケ680円)。「ミシュラン・ガイド北海道版」が発行されたようだが、ランクされた店で出す「開きホッケ」に比べてもおそらく遜色はないだろうと推測する。いわば、★★★のレベルだと自分は思う。
 
自分の父は漁師であり、ホッケは我が家の収入の数割を占めていたはずだ。焼いたり、煮たり、飯寿司にしたり、つみれ汁にしたりなど母親はいろいろ工夫しておかずに仕立て上げた。父の獲るホッケはかなり大きなもので、木箱に数匹しか入らず尻尾の方がはみ出ていた。だから、小生は子どもの頃から「ホッケを食べるプロ」なのだ。先日も美国にいる妹夫婦が送ってくれた積丹の本物の「ホッケの開き」を食べたばかりだった。
 
上京して食べたホッケは油が乗っていなくて身がパサパサで、それ以来、店ではほとんど頼んだことがなかった。昨日も実はあまり良い返事をしなかったのだが、友人が「騙されたと思って食べてみてくれ!」と言ったので、仕方なく同意した。ただ、一口食べて「本物だ」と判った。身に油があり、しっとりとした食感は塩加減の良さでもある。帰りに店の人に「どこで獲れたホッケか?」と聞いた。「築地でまとめて買ったのを、各店に配るので産地は判らない」との返事だった。
 
魚に関係する人なら知っているが、ホッケは「魚へんに花」と書く。かつては傷みが早くて地元でしか食べなかったが、流通の発達でいまや居酒屋の定番料理の一つになった。今度、水族館に行ったときにぜひホッケの水槽を観てもらいたい。食べるホッケの開きからは想像もつかない姿で泳いでいるから―。アブラコ(アイナメ)と親戚らしいー。