北海道の冬の発酵食

 先日会ったジャーナリストが「日本の伝統食が見直されている」と語った。とくに味噌が静かな注目を集めているという。地方の小さな味噌造り会社が海外を視野に入れた販売で成功しつつある。もちろんネット通販がそれを可能にしている。キーワードは「味」と「健康」だ。日本の味がそのように世界に出て行くのを想像するだけでも楽しい。日本の食品価値はあらためて凄いものがあるのだ。
 
 味噌は、昔から「自分の家で作るみそが最高」だった。「手前味噌」という言葉がある くらいで、それぞれの家庭の味が微妙に違っていた。小生が幼いころ、祖母が趣味と実益で味噌を手作りしていたことがあった。豆を茹で、ざるにとって・・・仔細は忘れたが、ずいぶんと手間をかけていた記憶がある。みそ作りには3つの楽しみがあるそうだ。「作る楽しみ」、「 待つ楽しみ」、そして「食べる楽しみ」だ。
 
 考えてみれば、故郷の冬の食べ物には「醗酵」が重要な位置を占めていた。味噌漬け然り、漬物然り、飯寿司然り。食卓に上がれば子どもたちは嬉々として食べたものだ。小泉武夫東京農大名誉教授によれば、こうした発酵食品は人間の健康にもっとも理にかなった食物なのだという。世界中にそれぞれの土地にあった発酵食品があると語り、実際に食べ歩いている。小泉氏こそ食文化の大家である。
 
 この時期になると、母が漬物の準備に忙しかったのを思い出す。一冬分の仕込をせっせとこなしていた。漬かると時々我が家に送られてきた。懐かしい母の味だが、開封すると関東の暖かさで冷蔵庫に入れても三日経てば旨味が落ちた。現在、上の妹が自分で飯寿司や漬物を作って送ってくれる。母の味に似ている。冷凍、冷蔵流通の進化で、美味しくいただくことができる。楽しみな時期に入った。