日本人の「コメが主食」は変わるか?

   読売朝刊11面の「論点スペシャル―『コメが主食』変わるか」が読ませる。とくに岩村暢子氏(アサツーディ・ケイ)の論旨が明快だ。「パンがコメを上回った現状には、二つの大きな原因がある」と指摘している。1950年代から1960年代にかけ、政府が「米食偏重の是正」を推進したこと、そして、今日の家庭生活の大きな変化を上げている。
 
 60年代にはほとんどの子どもが給食でパンを食べ、家庭でもダイニングテーブルでのパン食を、近代的スタイルとしてはやらせた。その影響を受けて育った世代が国民の大半を占めるようになり、今回の結果が出た。結果とは、2011年に1世帯あたりの購入金額はコメ(27,425円)と、初めてパン(28,321円)を下回ったことを指す。
 
 スーパーの米売り場には新米が出回っている。我が家でも先月から娘の嫁ぎ先で作った茨城産コシヒカリを食べている。今後、本当に日本人の主食は変わっていくのか。岩村氏の分析は家族の形に焦点を当てて具体的であり、共感できる。個々の都合や好みをかなえられてこそ、家族という集団が成り立つと考えている。
 
 「ゆるやかなつながりで許容し合えるのが、新しい家族像。好きなものを好きな時間に食べる今の食卓は、その帰結だ」と分析している。家族での外食でフードコートや回転寿司が流行るのは、誰からも異論が出ないからだという。食事に手間をかけるより、他のことが大事になるなど、食事自体の優先順位も低下している。
 
 岩村氏は「国の施策でここまでパンが伸びたと考えれば、今も私たちがどんなビジョンを持つかだ。家庭内では希薄だが、教育現場、企業や生産者がそれぞれの持ち場で、めざす社会に向けた行動を起こすしかない。牛丼などの市場は伸びているのだから、工夫の余地がある」と結んでいる。食と家族の詳細調査を15年にわたって続けてきた結論だ。