鱈の白子の天ぷら

   「冬の味覚でもトラフグの白子(精巣)は別格だろう。塩をして焼けば、外は香ばしく中は濃厚、スダチを搾るだけで至福の味わいだ」―今朝の「天声人語」はこう書き出している。筆者が言うように、「財布と相談の上、早春までの旬にぜひ食したい」ものだ。トラフグのみならず、旬の白子には堪能してしまう!!
 
 昔、父は冬にはスケソウダラ漁をしていた。もちろん、タラコを作るためだ。白子はどうしていたのか、あまり記憶にない。ただ、時々新鮮な白子が味噌汁の中に入っていて、その濃厚な味に子供ながら感動して食べたことを思い出す。たしか、白子で作ったかまぼこを食べたこともあるが、いつ、どこでかは忘れてしまった。
 
 10年ほど前に仙台に出張したとき、ワシントンホテルの傍にあった小料理屋に一人で入った。四十手前ぐらいの夫婦二人でやっている店で、三組ほどの客がいた。静かな雰囲気で、仕事で疲れていた自分にはかっこうの癒し処になりそうだった。店内は広くはないが、清潔感にあふれていて、これも気に入った。
 
 店の主人に「冬の仙台に来たのだから、美味しいものを食べたい。4000円ほどでお願いしたい」と声をかけたら、少し微笑んで肯いた。6、7品の料理が程好く出てきて、どれも旨かった。忘れられないのは、鱈の白子の天ぷらだった。さくさくの衣を齧ったら、白子の豊潤な甘さに一瞬驚くほどだった。浦霞の辛口がよく合った。