「死に甲斐」

 少し年上の友人から来た年賀状には、次の引用があった。
 
 「生きる者に生甲斐があるように、死に逝く者にも死に甲斐があるはず。国や子孫の行末を頼むと。遺った者はそれに応えていかなければならない」
 
  被災地の男性が述べたもの。友人は「昨年出会った感動の言葉の一つ」と書いている。この被災者の述懐には自分も心動かされるものがある。胸の深いところから吐かれた言葉は、すでに理屈を越えている。希望や使命をも越えている。言葉の本質がここにある。
 
 昨日午前、知り合いが亡くなったとの知らせを受けた。暮れから入院していたが、昨夜未明に天に召された。15年間ぐらいの付き合いだったが、ともに仲間として仕事に取り組んできた。正面から向き合う性格で、いつも一歩踏み出そうとしていた。しかし、時折弱さも見せた。彼女は自分の役割を十分に果たして逝った。
 
 昨日からあの年賀状の引用を幾度も繰り返し目で追っていた。小生はまだ自分の役割を果たし切っていない。このことを前向きに受け止めることにした。