「冬来たりなば春・・・」

 「冬来たリなば春遠からじ」、北の地の妹にメールした。そのとき幼いころから同級生・Nくんのことを思い出した。中学校の弁論大会で「冬来たりなば・・・」と吟じて優勝した。歌舞伎顔の彼の朗々たる弁舌はひと際すぐれていた。

 

 積丹地区の大会でも堂々の一位。後年、野塚中学代表だったMくんと吞む時は必ず話題にでたものだった。「古平の生徒はあんなに違う。レベルが違う大きい街だ」と驚いたという。二人の間で「冬来たりなば=Nくん」は合言葉になった。

 

 そんなことを思い出しながらこのフレーズは誰の言葉だ? かつてNくんに聞いたら弁論では江戸時代の儒学者佐藤一斎などから引用したらしい。しかし、この「冬来たりなば・・・」は英国詩人・シェリーの一節だと分かった。まるで勝てる訳がない。

 

 この詩を妹に使ったのを少し後悔した。当地埼玉では「春遠からじ」だが、北国では「春はるかなり」だからだ。寒い忍耐の日々が続くのだ。幸いにも妹からの返信には「オリンピック札幌マラソン見に行こうかな!」とあった。春どころか夏まで望みをかけている。