父の命日に思う

 明け方父の夢を見た。漁に使うロープのヨリをもどす作業をしている。家の前から金子商店近くの電柱まで綱を伸ばし張っている。その側でオレと弟が競って手伝おうとしている。

 

 きのう札幌の妹が帰郷し墓参りをしてきた。きょう9月17日が父の命日。利尻島沖で事故死した。オレは20歳で初めて人生に渇(カツ)を入れられた。秋晴れが突然闇に変わった。

 

 享年52歳。オレは父より20年も長く生きている。父の顔が年とともに穏やかになっていった当時の記憶。父の生きがいはなんだったのか。若いときの話を、いまじっくり聞きたい。

 

 オレの声は父に似ている。息子の声はオレに似ている。孫の声は息子に似ている。おそらくそう聞こえるのかもしれない。静かに素直に父の心奥を覗くために、自らの心を覗く。