父の月命日

 

 北海道・積丹半島、神威(かむい)岬は西に向かって海に没していく。途中カムイ岩が立ち、岩礁がしだいに消えていく。その落陽は大きく、日本海を茜色に染めていく。

 

 積丹町の妹が送ってくれたその落陽写真をパソコンの側に立てかけている。札幌の妹から届いた神威岬の道新記事がその風景に“ものがたり”を与えた。岬、ニシン漁、江差追分が重なり、イメージが動き始めた。

 

 さらに先日みた礼文島のTVドキュメンタリーまでインプットされた。日本海から吹く“西風”を漁師たちは警戒した。大シケになる。「丸山のようなうねりが来る」と父は言っていた。

 

 父は若いころ旭川の軍隊にいた。「常盤公園によく行ったよ」、それ以外は語らなかった。旭川に出張するたびに常盤公園を訪れ、静観した。公園のすぐ側を石狩川が流れていた。

 

 いま、神威岬の落陽から常盤公園の木漏れ日まで、石狩川の久遠の流れをさかのぼった。きょうは父の月命日。事故死した礼文島沖では、たとえ吹雪の中でも落陽は輝いていると信じる。