森友先生の蒲鉾「白銀」

 「森友先生の蒲鉾、これで終わりだよ」、家人が昨晩そう告げた。40年間以上もお歳暮で頂いてきた山口・防府市の蒲鉾「白銀」はスケソウダラとタイのすり身から作られていて、その歯ごたえと味の良さ、真っ白の上品さは天下一品。最後の一本だ。

 

 森友幸照先生はこの白銀に郷愁の思いを込めて送ってくださった。我が家は今も子ども家族におすそ分けしておせちとして食卓に上がる。きのうその白い切り身を口に運びながら先生に深く感謝した。多くの人と機会を紹介してもらった。その足で四谷荒木町の小料理屋に。

 

  先生は雑誌編集者から歴史研究者になり中国古典、幕末から明治維新の志ある人物と向き合った。この入社間もない田舎者にも身の余るほどの知識と温情を与えてくれた。ある意味、社会人としての自分の半分は森友先生の影響を受けている。

 

 奥様から年末に書状を拝受した。「正月が過ぎたら森友は郷里の先祖代々の墓に納骨します」。電話をしてお伺いできないことを詫びた。奥さまにもずいぶんお世話になった。先生から「雑誌づくりの基本は現実の予見だよ」、そう例えて人生を教えてもらった。